鍼灸治療


 

当院の鍼灸治療は、「シン経絡治療」という経絡を使った鍼灸治療です。

主訴:患者さんの訴える痛みの部位がどの経絡にあるのかを判断して

その関連経絡:相生関係、相剋関係、兪穴、募穴、五腧穴等の反応点(圧痛)に

鍼灸をすることでその緩解、治癒に導いていく治療法です。

そのバックボーンは、沢田流太極療法・長野式治療・深谷灸法になります。

 


症  例


結膜下出血のお灸治療


朝起きると眼の白いところが真っ赤になって驚いたり、

友人や会社の人がそんな状況だったりすることがあります。

マツコ・デラックスさんも時々テレビで拝見していると

眼が真っ赤になっていることがありますね。  

不思議なことに本人的には、無症状です。  

普通、1週間くらいで自然治癒します。  

ただ、見た目的に「だいじょうぶですか~?」って感じなので気を使いますね。

この「結膜下出血」に効くツボがあります。

伝説の鍼灸師 長野 潔先生がその著書に書かれていました。

 それが「曲沢」(きょくたく)です。

  

お灸をするとだいたい翌日には、真っ赤がオレンジ色の散った状態になって薄くなります。

2~3日で元のに戻ります。

 

その後、「曲沢」よりも肘の内側で圧痛がある所の方が効くことがわかりました。

 

   


大学病院の検査で異常なしと言われためまい・動悸が緩解した症例


性 会社員 30歳代
主訴 動悸・めまい・不眠・偏頭痛・食欲不振
 
特に、何が原因というわけでもなく、上記症状が
生起した。
近所のクリニックで受診。会社も2週間休む。
薬も効果なく、大学病院で検査を受けるも、異
常なしと言われ、不安が増幅。
鍼灸で何とかなるかと思いで来院。
 
《考察》
経絡は、動悸:心包経・心経。めまい、
不眠:肝経。偏頭痛:?
肩回りを触診すると、凝っている感じはしない。
胸鎖乳突筋を触ると痛がったので、圧痛点を
みてみると。
天鼎(大腸経)とその上下に激圧痛があった。
肩が柔らかいのに肩こりを訴える患者さんを
何人か診たことがある。
その場合、胸鎖乳突筋を非常に痛がった人
が多かった。
胸鎖乳突筋のダメージが肩こりを誘発してい
るのでは?
胸鎖乳突筋の圧痛点(天鼎付近)に紫雲膏灸
をすると柔らかい肩こりに効くことがあります。
 
長野式では、天牅の圧痛を扁桃炎として
とらえ、重要視しています。
天牅よりも天鼎・扶突の方に圧痛がある
ようです。
この胸鎖乳突筋の凝りが酷くて頭痛になる
めまいになるのでは?
痙性めまいというのがあります。頸の骨・筋
靭帯の異常によるものや椎骨動脈、その
周囲の交感神経線維の異常が原因と考え
られているそうです。
これって、痙性めまいの一種?
 
《治療方針》
めまい・偏頭痛は、痙性めまいを想定して
胸鎖乳突筋を緩めるべく(天鼎付近)
動悸は、心包経か?心経か?良くわから
ないので、めまいが肝経なら同じ厥陰経の
心包経を使おう。
 
【治療】
はじめての鍼灸治療ということなので
接触鍼(寸3―1番)と紫雲膏灸(3壮)
背部兪穴特に、凝りを探って。
接触鍼をしたところに紫雲膏灸。
仰臥位でいつもの免疫強化・粘膜強化・
疲労回復に尺沢・曲池・手三里・足三里・
三陰交・照海に紫雲膏灸。
動悸には、心包経の左の郄門(郄穴)・
大陵(兪土原穴)。
気は、左の理論から左側を取穴。
 
腹部は、心包経の募穴:膻中を押して
みると痛がったので取穴。
膻中は、八会穴の気会。やはり、
気の病なのか?
 
沢田流の自律神経調整にも効く
中脘・左陽池を取穴。
胸鎖乳突筋の圧痛は、天鼎付近に
3カ所あったので取穴。
(左右)右の時は、頭を左に傾けてもらい、
胸鎖乳突筋を張らして施灸。
治療が終わると身体が少し楽に
なったと言った。
ただ、仕事柄予約を今決められない
のでまた電話しますとのことだった。
 
10日後に来院。
前回の治療後、動悸は、軽減した。
めまいは、仕事中、時々あるが
全体的に楽になった。
圧痛のあったツボには、まだ、残っていた。
同上治療。
 
それから、3か月後不意に来院した
彼は言いました。
動悸、めまい、偏頭痛は、ほとんどない。
今日は、疲労があるのでメンテナンス
の意味で来たと。
 
【まとめ】
長野潔先生の著書 『鍼灸臨床 
わが三十年の軌跡』
にめまい(眩暈)のことが書かれています。
それによるとめまい(眩暈)には、
虚証と実証があると。
さらに、虚証は、二つに分かれます。
 
肝腎陰虧(かんじんいんき)と
心脾の気血の不足。
 
肝腎陰虧は、頭がくらくらする。
目がくらむ。気力がなくなる。
腰膝がだるく力がなくなる。
 
心脾両虚は、心悸によって眠れない。
食欲減退。

実証も二つあるそうですが、割愛します。
 
このことから、今回の症例は、
心脾の気血の不足からきためまい、
動悸だったのか?
痙性めまいを疑い、胸鎖乳突筋、
天鼎付近の緊張を緩めたのが
良かったのか?
判断はつかないが、結果が出せて良かった。
原因不明のめまい、動悸に遭遇したら、
肝腎陰虧か心脾の気血の不足か
痙性めまいを想定するという選択肢が
増えたことは、治療の幅が広がった
という意味でも大きな収穫だった。

帯状疱疹に併発した激頭痛がお灸で緩解した症例


男性 40歳代

帯状疱疹を発症。

帯状疱疹がひどくなるにつけて頭痛も増悪。

最近は、帯状疱疹より頭痛が耐え難い。

医者に帯状疱疹と頭痛は、関係あるのか聞いたところ

「ない」と言われた。

痛み止めの薬も効果がない。

 

本人は、帯状疱疹より、この酷い頭痛を何とかしてほしい。

頭痛の部位は、頭のてっぺんより若干右より。

膀胱経の通天、承光辺り。

その部に触ろうとしたら、「痛たたた―!」

髪の毛に触れようとするだけで大変な痛がり様。

 

帯状疱疹は、右乳輪下から脇腹、肩甲骨下を通り、

左側の肝兪まで広範囲にただれて痛々しい。

 

関係経絡を見積もると

頭痛は、膀胱経。

帯状疱疹は、胃経、脾経、胆経、膀胱経。

 

《考察》

帯状疱疹により胃経、脾経が侵されて、脇腹の胆経に伝播。

更に、膀胱経を侵襲したのではないか?

 

膀胱経の所生病には、頭頂部痛が起こると

『山田光胤、代田文彦著 図解 東洋医学 基礎編』 P93にあります。

 

【治療】 紫雲膏灸3壮

肩凝りが酷いので

肩髎、大椎、膏肓

背部兪穴は、帯状疱疹のただれている部分を避けて、脾兪~次髎まで。

特に、胆兪、脾兪、胃兪の取穴は丹念に。

 

胃と脾は、土なので陽経合土穴を主眼に五行穴を使用。

下肢は、陽陵泉(胆:合土穴)、委中(膀胱経:合土穴)

 

腰部は、膀胱兪よりも小腸兪に近いところに圧痛があったのでそこを取穴。

 

免疫力強化、粘膜強化・疲労回復に尺沢・曲池(大腸経:合土穴)、足三里(胃経:合土穴)

三陰交、照海。

 

尺沢・曲池、手三里は、肺経・大腸経。

五臓の色体表では、肺、大腸は、皮。

皮膚疾患によく使われます。

 

特筆すべきは、三陰交を押したところ、物凄く痛がりました。

三陰交の上下10cmくらいに渡って激痛。

帯状疱疹は、この脾経の経絡上を侵してます。

なので、土中の土。脾経の太白(陰経:兪土原穴)を取穴。

 

五要穴は、募穴。

脾経の募穴は、章門。

だが、圧痛はない。章門は、肝経だからか?取穴せず。

胆経の募穴は、日月。軽圧痛あり、取穴。

胃経の募穴は、中脘。

沢田流のコンビネーションツボの左陽池と合わせて取穴。

 

治療中、脾兪、胃兪辺りからイビキをかき始めた。

問診の時、疲れていないと言っていたのに。

 

仰臥位になった時には、頭痛は、半減したと言った。

治療が終わると8~9割良くなった。髪の毛を触っても痛くない。

 

医者は、帯状疱疹と頭痛は、関係ないと言ったそうだが、果たしてそうだろうか?

東洋医学の経絡に当てはめると説明がつく。

もちろん、科学的ではないが。

科学的の意味は、人間が人間に説明できる目に見えるエビデンスがあること。

しかし、宇宙の、振り返って、人間の全ても科学的に明らかにできていない現状があるのも事実。


顔面神経麻痺の鍼灸治療


性  20代

2ヶ月前に右顔面神経麻痺を発症。

病院での治療、薬で良くならない。

鍼灸が効くかもと友人(当院の患者)に促されて、当院を受診。

 

《初診》 〇月10日

右眼を閉じようとすると白眼になり完全に閉じない。(ベル現象)

右の口角が右下にひきつれている。

 

《治療》

顔面神経麻痺の部位は、経絡的に

胃経・胆経・大腸経・小腸経・三焦経・膀胱経

この中でも、胃経と胆経が主要経絡に思われます。

 

まず、沢田流全体治療として背部兪穴を中心に紫雲膏灸3壮を施灸。

兪穴は、膀胱経にある。

膏肓・天髎・大椎

膈兪・肝兪・胆兪・脾兪・三焦兪・腎兪・大腸兪・小腸兪・次髎

 

仰臥位で、免疫力強化、粘膜強化・疲労回復として

尺沢・曲池・手三里・足三里・三陰交・照海

長野潔先生は、顔面神経麻痺に胃経の解谿と大腸経の陽谿をとる。

両方とも火穴。両穴も取穴。沢田流左陽池も三焦経として取穴。

お腹は、募穴を取穴。

中脘(胃経募穴)・日月(胆経募穴)・関元(小腸経募穴)

 

麻痺を起こしている顔面部には、接触鍼(寸3-1番)。

聴会(胆経)・地倉(胃経)・頬車(胃経)・四白(胃経)・迎香(大腸経)

顴髎(小腸経)・攅竹(膀胱経)・清明(膀胱経)・童子髎(胆経)・頭臨泣(胆経)

以上で治療終了。治療中ほとんど寝ていた。

 

《第2診》 〇月22日(12日経過)

仕事が忙しくて来れない。本来は、続けて1週間治療した方が治りは早い。

ベル現象は、変わらないが、閉じようとする動作は幾分早くなった。

口角のひきつれは、ほとんど改善していた。

同上治療。

 

《第3診》 〇月28日

ベル現象は、第2診と変わらない。

口角のひきつれは、平常。まだ、少し違和感があるという。

おでこをを動かす感覚が出てきたという。

同上治療。

 

《第4診》 △月18日 (第3診から20日経過)

やはり、治療間隔が空きすぎるとなおりが悪い。

第3診と変わらず。同上治療。

 

《第5診》 △月21日

右眼は、初診時に比べて、閉眼がしやすくなった。

口角のひきつれは、わからなくなっている。

 

 

《第6診》 △月31日  (第5診から10日経過)

見た目には、顔面神経麻痺とは、わからない。

ただ、右おでこにしわが作れない。

少しづづだが動くようになってきたという。

第5診に同じ治療。

 

その後、仕事が忙しいので通院できない。

顔面神経麻痺は、ほとんどよくなったのでとの連絡があった。

もう少し継続した方が良いのは分かっていたが致し方無かった。


頚椎症にお灸が効いた症例


男性 70歳

 1ヶ月前から頭を反らすと肩から腕にかけて痛みが出る。

また、右腕がしびれることもある。

 

首の痛みで多いのがむち打ち症。

 

むち打ち症に効くツボが「上仙」(じょうせん)

むち打ち症の場合、この「上仙」に圧痛が出ます。

 

この方の場合、圧痛はありませんでした。

むち打ち症ではないと頚椎症が考えられます。

 

そこでどちらも似かよった症状なので

「上仙」にお灸をしていただくことにしました。

 長生灸お灸日和は、煙がほとんどでないのでお家でやっていただいても支障ないのがいいです。

また、ほんのりフルーツの香りがするのも癒されます。

 

治療から3週間後

7~8割改善したとのこと。

3週間毎日奥さんにお灸をしてもらったそうです。

お灸は、毎日続けることが大事です。

「上仙」に圧痛は、なかったけれどお灸の熱さは他のツボよりわからなかったそうです。

メインは、「上仙」ですがその他に「大椎」などの首のツボ

 

背骨と「上仙」の上の数カ所にもお灸をお家で朝晩2回していただきました。

お灸を続けているうちにすこしづつ熱さが分かるようになったと。

 

それからさらに3週間後来られて

首の痛み腕のしびれは、ないそうです。

ご本人もお灸の効果でお灸信奉者に。

 

この日は、花粉症に効くツボの取り方をレクチャーしました。

今から花粉症のお灸治療をしておくと来年軽くすみます。

 

 


不登校(中学生)の鍼灸治療


7月1日  女子中学生は、母親の腕にすがり

後ろに隠れるように入室した。

 

顔色が悪い。暗く青黒い。

問診は、母親を介して。

学校は、月に2~3回しか登校していない。

不登校の本当の原因は、はじめて会うおじさんには言わないだろう。

症状は、背中が重い、頭痛、不眠、震えが急に起こる。

 

《考察》

五臓の色体表という鍼灸理論の鑑別法があります。

それに合致している所見があります。

青は、肝。黒は、腎。

急に震えるは、恐。で腎。

 

腎と肝の経絡の変動だと分かりました。

また、不眠は、肝と関係があります。

 

《治療》

鍼灸がはじめてなので、恐怖心を抱かせないよう、

接触鍼(刺さない鍼)とお灸(やけどしない温灸)を使用。

(伏臥位)

背中から腰まで緊張している。元々重だるいところに

はじめての鍼灸で過緊張状態。

肩の天髎から膈兪、肝兪、脾兪、腎兪、小腸兪等の兪穴と次髎まで。

自律神経調整のため身柱。不眠に筋縮(沢田流)。

子供の必須穴命門(身柱と共に使う、沢田流治療)

この命門は、沢田流命門。第14椎棘上突起両側5分に取る。

凝りや張りのある方を取穴するのが常道。

今回は、それがわかりずらかったので、『気は、左。血は、右。』の考えから左の命門を取穴。

命門は、腎兪、志室の並び。腎経に影響する。

 

(仰臥位)

免疫力強化・粘膜強化・疲労回復に尺沢・曲池・手三里・足三里・三陰交・照海。

沢田流の自律神経調整等万能コンビネーションツボとして中脘・左陽池。

気の調整に気海。

 

(座位)

百会に浅置鍼。怖がらずに刺させてもらえた。痛がらなかった。

肩井、大椎に温灸。

治療中一言も発しなかった。

治療を終えて

「どうですか?楽になりましたか?」と尋ねると。

少しはにかんでうなづいた。

1週間後の予約をして帰った。

 

7月8日  第2診

母親と来院。

母親の後ろに隠れることはなかった。

初診の夜以降、眠れるようなった。

気分も少し良い。母親もいい意味で変化があったという。

数脈はまだある。交感神経優位の状態。

初診と同じ治療。

1週間後の予約をして帰った。

 

7月15日 第3診

母親と来院。

初診の時とは、明らかに変わった表情に驚いた。

暗い顔色は、血の気の通ったしっかりしたものになっていた。

お祭りに友達と行って踊ったといった。

数脈は平脈に変わった。

もうすぐ、夏休みなので2学期は様子を見て考えるということであった。

症状も緩解しているので治療を終了した。

 

8月26日 第4診

女子中学生は、一人で来た。

お腹が痛い。背中がジーンとする。頭痛。という症状。

表情や話し方は、普通の女子中学生。

 

従前の治療に、コメカミの頭痛に胆経、 陽陵泉、陽輔、日月を使った。

お腹は、大腸経、小腸経の兪穴、募穴を使った。

気持ちよかったと言って帰った。

学校に登校できるようになるかわからないが

生きる力が戻ってきたのは、これからの彼女にとって

前進であったとの感慨に胸をなでおろした。